2.5GbEでインターネットも速くなる?
5Gbps回線で検証しました

■ ギガファイル便、Dropboxなど各種インターネットサービスの速度を検証

プラネックスは低価格の2.5Gbps対応5ポートスイッチングハブ「FX2G-05EM」を発売しました。前回の記事で紹介したように1GbEに対して2.5GbEはLAN内の転送速度が劇的に速くなります。ただ、2.5GbE化をしても「LANは高速化できてもインターネットは速くならないのでは?」と思うかもしれません。
たしかに、インターネット回線の速度は最大1Gbpsという環境は多いと思います。マンションではその回線を各世帯で共用するため、「○時頃になるとネットが遅い」など、実速度は回線の最大速度より遅くなることがあります。
最近では2Gbpsや5Gbps、もしくは10Gbpsという高速なインターネット回線も一部地域で利用できるようになりました。しかし、それは自宅から回線業者までの速度で、その先の途中経路や利用するインターネットサービスのサーバーが低速であれば、高速インターネット回線もLANの2.5GbE化も、あまり意味がないと考えてしまう人もいるでしょう。
本当にそうなのでしょうか。LANの2.5GbE化と高速なインターネット回線を利用して、実際にインターネットのアクセスが高速になるのかテストしてみました。
テスト内容は以下の6種類で、昼時間帯(13〜15時)と夜時間帯(0時〜2時)の下り速度の計測と、同一ファイル(ファイルサイズ約2GB)のダウンロード時間を計測しました。
「SPEEDTEST」でのインターネット通信速度
● さくらインターネットサーバーに置いたファイルのダウンロード時間
● さくらインターネットサーバーで「コンテンツブースト」利用時のダウンロード時間
● ファイル交換サービス「ギガファイル便」のファイルダウンロード時間
● クラウドストレージサービス「Dropbox」のファイルダウンロード時間
● クラウドストレージサービス「OneDrive」のファイルダウンロード時間
このうち、特にクラウドストレージサービスは、ファイルの日常的なバックアップや他の人とのファイル交換を「安定的」に行うことを優先していて、「速さ」はそこまで追求していないイメージがあります。インターネット回線が高速でも、転送速度の上限が抑えられ、一定以上の速度が出ない予感もあります。

■ 5Gbpsのインターネット回線で1GbE、2.5GbE、Wi-Fi 5などを比較

テスト環境のインターネット回線は「auひかり ホーム 5ギガ」。最大5Gbpsでインターネット通信が可能な契約です。戸建での利用なので1つの回線がマンションのように他の世帯と共用されることはありません。
宅内ネットワークは、有線LANが1Gbps、2.5Gbps、10Gbps、無線LANがWi-Fi 5(802.11ac)を比較しました。「auひかりホーム5ギガ」 が使用するホームゲートウェイ(BL1000HW)には10GbpsのWANポート、1GbpsのLANポートが3つと10GbpsのLANポートが1つ搭載されています。10GbpsのWAN/LANポートはありますが、インターネット回線が5Gbpsなので実質は5GbEとなります。
用意したパソコンは1台がデスクトップパソコンでオンボードLANが1GbE、PCIeスロットに10GbEのLANアダプターを増設しています。もう1台がノートパソコンで、内蔵無線LANのWi-Fi 5(リンク速度866Mbps)と、2.5GbEに対応したUSB有線LANアダプター「USB-LAN2500R」を使用しました。
追記:「USB-LAN2500R」の後継機、「USB-LAN2500R2」が発売されました。(2023年10月)
2.5GbE対応のUSB LANアダプター「USB-LAN2500R」
追記:「USB-LAN2500R」の後継機「USB-LAN2500R2」
接続の都合上ホームゲートウェイの10GbpsのLANポートに2.5GbE対応のスイッチングハブ「FX2G-05EM」をつなぎ、そこからデスクトップパソコンのオンボードLAN(1GbE)、ノートパソコンの有線LANアダプター(2.5GbE)、Wi-Fi 5のアクセスポイントを経由してノートパソコンのWi-Fi 5に接続しています。10Gbpsだけホームゲートウェイの10GbpsのLANポートに10GbEのLANアダプターを増設したデスクトップパソコンを直結しています。
2.5GbE対応スイッチングハブ「FX2G-05EM」

■ 「SPEEDTEST」でのインターネット通信速度

最初は「SPEEDTEST」を使ったインターネット速度の計測です。1GbEでは理論値に近い約940Mbpsで、Wi-Fi 5に対し1.8倍以上と、速さと安定性の高さを備えた有線LANの実力が出ています。これでも一般的な用途であれば十分に高速ですが、2.5GbEではその倍以上の2Gbps超という圧倒的な速度を記録しました。5GbE(LAN内は10GbEですが実質5GbE、以下同)は2.5GbEより速度アップしているものの、2.5GbEの2倍にはほど遠く伸びはわずかでした。
「SPEEDTEST」でのインターネット通信速度の計測結果
SPEEDTESTの計測画面

■ さくらインターネットサーバーに置いたファイルのダウンロード時間

次はさくらインターネットのサーバーに置いたファイルのダウンロード時間を計測しました。使用したファイルは約2GB、以降ダウンロード時間の計測は同じファイルを使用しています。
こちらは、昼間の計測でWi-Fi 5 → 1GbEは1.95倍と大きな速度向上がみられますが、有線LANは1GbE、2.5GbE、5GbEの差は大きくありません。
さくらインターネットに置いたファイルのダウンロード時間

■ さくらインターネットサーバーで「コンテンツブースト」利用時のダウンロード時間

さくらインターネットには「コンテンツブースト」と呼ばれるオプションサービスが用意されています。コンテンツブーストの説明には「サイトを高速・安定化し、Webページへの快適なアクセスを実現。表示速度の高速化だけでなく、大量アクセスによりWebサイトが表示されないといった問題も解決。」と謳われています。このコンテンツブーストを有効にしたときのダウンロード時間を計測しました。
コンテンツブーストの効果は絶大で、1GbEは3倍、Wi-Fi 5、2.5GbE、5GbEでは4倍ほど速度が向上しました。サーバー側の速度が向上したことでLAN側の速度差も顕著になっています。昼間の計測でWi-Fi 5 → 1GbEは1.63倍、1GbE → 2.5GbEは1.29倍、2.5GbE → 5GbEは1.13倍となりました。尚、ダウンロード時間のグラフの横軸は最大2分30秒に統一しています。
コンテンツブースト利用時のダウンロード時間
今回の計測はさくらインターネットを利用しましたが、同社は東京、大阪、石狩にデーターセンターを設置しています。利用者の住居地、インターネット回線により結果は異なると思われますので参考程度にみていただきたいと思います。以下のインターネットサービスも同様です。

■ ファイル交換サービス「ギガファイル便」のファイルダウンロード時間

大容量ファイルの交換で多くの人が利用されている「ギガファイル便」は、この後に紹介する「Dropbox」や「OneDrive」よりは高速な印象で、日中と夜間の速度差が少なめな結果となりました。
こちらは、昼間の計測ではWi-Fi 5 →1GbEは1.36倍、1GbE → 2.5GbEは1.15倍、2.5GbEと5GbEはほぼ同じとなりました。無線LANを有線LANにすると、そこそこ速くなりますが、有線LANの速度差は大きくないという結果となっています。
「ギガファイル便」のファイルダウンロード時間

■ 「Dropbox」「OneDrive」クラウドストレージサービスのファイルダウンロード時間

クラウドストレージサービスはどうでしょうか。最後は定番の「Dropbox」と「OneDrive」を計測してみました。「Dropbox」「OneDrive」とも夜間より日中の速度が速い傾向となりました。ビジネスユースが多いと逆になりそうな感じがしますが、昼間の速度が速いことはビジネスユーザーにはよいことだと思われます。
「Dropbox」のダウンロード速度は高速とは言えませんが、それでも昼間の計測では1GbE → 2.5GbEは1.23倍となっています。「OneDrive」は「Dropbox」より全体的にやや高速な傾向で、1GbE →2.5GbEは1.49倍と明らかな速度差がみられます。5GbEは「OneDrive」「Dropbox」とも2.5GbEに対し目立った優位性はないように感じられます。
ちなみに、このグラフからは見えてこない要素として、「Dropbox」は速度はそこそこながら、安定性が際立っている印象でした。一時的な回線混雑で極端に低速になったり、高速になったり、といったダウンロード中の不安定さがほとんどなく、普段から安心して使えるサービスです。
「Dropbox」のファイルダウンロード時間
「OneDrive」のファイルダウンロード時間

■ 2.5GbE化は高速インターネットを快適にするベストな選択肢

改めて全体の結果を眺めてみると、無線LAN(Wi-Fi)と比べて有線LAN接続の速度と安定性が高いことがわかります。送り出すサーバー側の速度が上がると2.5GbEは従来の1GbEよりインターネットの各種サービスが快適に利用できることも明らかと言えます。日頃から利用している様々なインターネットサービス、企業や公共団体のWEBサイトなどが高速なサーバーを設置すると、LAN環境の高速化のメリットが知らず知らず増えると考えられます。
LAN環境をそれ以上に高速な5GbEにしても、2.5GbEと同等かわずかに速くなる程度でした。将来的にさらにインターネット全体が高速化される可能性はあるにしても、少なくとも今の時点でLAN環境を5GbEや10GbEにしても、インターネットの速度という面では期待するほどではなさそうです。
5Gbpsや10Gbpsといった高速インターネット回線を契約している、もしくはこれから導入することを考えているなら、LAN環境の2.5GbE化はインターネットの快適さにもつながると考えられます。
さらに高速インターネット回線に言及すると、今回はパソコン単独のダウンロード時間を計測していますが、企業などで大人数が一斉にOSのアップデートを行うようなケースでは、高速インターネットサービスの回線の太さというメリットが活きてきます。1人1人のダウンロード速度は速くなくても、大人数で速度が遅くならないことが期待できます。
低価格なスイッチングハブの登場で、LAN環境の2.5GbE化は身近になりました。今回の検証結果を見ると、WAN、LANを含めたネットワーク環境において、1GbEから2.5GbEへの移行は、今のところ最もコストパフォーマンスの高い選択肢になると考えられます。

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