Synology NAS「DS216+II」「DS916+」が2.5倍速へ
〜互換性が向上した「USB-LAN2500R2」で古いNASを2.5GbE化しました〜

■ 互換性が向上した「USB-LAN2500R2」で古いSynology NASを2.5GbE化

USB-LAN2500R2」が2023年10月に発売されました。チップ内部の電源を安定化したことで互換性が向上した「RTL8156BG」を搭載したことで、これまで2.5GbE化ができなかったSynology NASの高速化が期待できます。
「USB-LAN2500R2」に搭載された最新チップRTL8156BG
前回と今回はSynologyの古めのNASを複数台使用している2人の執筆者に新たに動作検証を依頼、その結果をお知らせしたいと思います。前回はDS716+、DS216j、DS416playの検証結果を紹介しました。今回はDS216+II 、DS916+を使用する執筆者からのレポートをお届けします。
先にお伝えしておきますが、紹介するSynology NASの2.5GbE化はNASメーカーが公式に認めている方法ではありません。将来的にNAS OSのアップデートで動作しなくなるかもしれませんので、試される人はあくまでも自己責任でお試しいただければと思います。

■ 使用しているSynology NASはDS216+II、DS916+など

筆者が所有するSynologyのNASは「DS216+II」「DS918+」など5台。もっとも古いのは13シリーズで10年前の製品です。従来機の「USB-LAN2500R」で数年前に2.5GbE化にトライしましたが、1台も成功しませんでした。後継機となる「USB-LAN2500R2」はREALTEKの最新チップRTL8156BGを搭載し互換性が向上したとのことで期待感はマックスです。
DS216+IIは2bayで2016年発売の製品です
DS216+IIのUSB 3.0ポートはフロントにあります
DS916+は4bayで2016年発売の製品です
DS916+は前面と背面にUSB 3.0ポートを装備。2つのLANポートはLAGに対応しています
搭載されているCPUは、DS216+IIがIntel Celeron N3060、DS916+はIntel Pentium N3710となっています。アーキテクチャはどちらもBraswellでドライバー(パッケージ)はr8152-braswell-2.17.1-1_7.1.spkを使用しました。

■ 念願の2.5GbE化

まずはDS216+II。ドライバー(パッケージ)を手動インストールして「USB-LAN2500R2」を装着するとNAS OSの[コントロールパネル][ネットワークインターフェイス]に新しいLANが追加されます。リンク速度を見ると2500Mbpsでリンクしていることが確認できます。ドライバー(パッケージ)を更新したので試しに数年前にトライしてダメだった従来機の「USB-LAN2500R」に差し替えてみましたが、やはり認識されず新しいLANは表示されませんでした。
ドライバー(パッケージ)を手動インストール。LANが追加され2.5Gbpsでリンクします
従来機USB-LAN2500Rに差し替えるとLANは追加されません
Synology Assistantを起動するとLAN内にあるSynologyのNASの一覧が表示されます。「USB-LAN2500R2」を装着してLANが追加された状態になると、1台のDS216+IIが異なるIPアドレス、異なるMACアドレスで2つ表示されます。IPアドレスが異なりますので別々のネットワークドライブに設定するなど使い分けも可能となります。
Synology Assistantを起動すると1台のNASが異なるIPアドレス、異なるMACアドレスで2つ表示されます
次のDS916+は1GbpsのLANが2ポートあり、これをリンクアグリゲーションで束ねて1Gbpsのスマートスイッチに接続しています。ネットワークとしては2Gbpsとなりますが、これはネットワークの速さというよりネットワークの太さとなります。スマートスイッチに接続されたそれぞれのパソコンとは1GbEでリンクしていますので1台のパソコンがNASにアクセスするときは1GbE、2台のパソコンが同時にアクセスするとスマートスイッチ〜NAS間は2GbEとなりリンクアグリゲーションの効果を発揮することが可能です。
DS916+もドライバー(パッケージ)を手動インストールして「USB-LAN2500R2」を装着すると新しくLAN3が追加されます。ネットワークインターフェイスで確認するとLAN1とLAN2をボンディングして2000Mbpsとなっているところに、追加されたLAN3が2500Mbpsでリンクしています。
LAN1とLAN2はボンディングして2000Mbps。追加されたLAN3が2.5GbEでリンクしています

■ ベンチマークソフトCrystalDiskMarkで速度の向上を確認

速度を確認してみましょう。DS216+IIをCrystalDiskMarkで計測するとシーケンシャルアクセスは最初のReadが118.39MB/s(1GbE)から293.22MB/s(2.5GbE)で2.48倍とほぼ理論値の速度の向上がみられます。Writeは1.6倍ほどで2bayのHDDの書き込み速度の遅さで頭打ちとなりました。ランダムアクセスはこれまでの計測結果と同様にやや低速となっています。
DS216+II、1GbEの計測結果
DS216+II、2.5GbEの計測結果
DS916+のCrystalDiskMarkの計測結果をみるとシーケンシャルアクセスは最初のReadが118.56MB/s(1GbE)から296.43MB/s(2.5GbE)、Writeが117.94MB/s(1GbE)から295.10MB/s(2.5GbE)となり、どちらも2.5倍と理論値どおりの速度の向上がみられます。ランダムアクセスはこれまでの計測結果と同様にやや低速となっています。
1GbEでは2bayと4bayのシーケンシャルアクセスのRead、Writeの差はありませんが、2.5GbEになるとHDDへの書き込み速度が遅い2bayは頭打ちしました。書き込み速度の速い4bayはRead、Writeで同等の速度となっていますので、2.5Gbps以上のLANに対応したNASは4bay以上の機種でないと、ネットワークの速度を生かすことができないと思われます。
DS916+、1GbEの計測結果
DS916+、2.5GbEの計測結果
最後にDS916+からパソコンのデスクトップへ5GBの動画ファイルをコピーしてみました。転送速度は280MB/sほどで、これまで見たことのない高速なファイル転送ができました。
ファイル転送の様子。280MB/sほどで安定しています

■ 「USB-LAN2500R2」の向上でSynology 16シリーズの2.5GbE化に成功

RTL8156BG搭載の「USB-LAN2500R2」はDS216+II 、DS916+を含め5台のSynologyのNASで2.5GbE化に成功しました。ただし、13シリーズ、14シリーズやエントリーモデルのJシリーズは実測しても大きな速度の向上はありませんでした。
2.5GbE化による速度向上はNASのCPUパワーに依存するようで上位機種では効果が期待できそうです。CPUパワーは世代が新しければ向上します。新しい世代の機種では上位機種でなくても効果があるかもしれません。

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